経済産業省にできたスペース「PERCH OFFICE」−省庁や企業の中で起きるコワーキング文化

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2月の話ですが、打ち合わせで霞ヶ関にある経済産業省に行った時、打ち合わせ場所として通されたのが、経済産業省の中に1月末にできた「PERCH OFFICE」というところでした。

「なんだろ?」と思ったら、誰でも利用できるフリースペースで、経産省の中の人たちが利用できるスペースのようでした。民間企業だと、コミュニティスペースなどと言われるような場所だと思います。しかし、今まで省庁ではこうしたスペースは皆無で、基本的に自分のデスクでの作業、もしくかっちりと密閉された会議室や打ち合わせスペース、資料室などしか建物内にはないのが現状でした。

経産省の省庁の人たちが自前で持ってきた書籍をもってシェアライブラリーになっていたり。できたばかりなのでまだ書籍は少なめ。

民間では、色々な施策を通して、働き方の見直しや情報共有のクラウド化、オンラインMTGなど、様々な取り組みを通して、今の時代に最適な環境を作ろうと日々努力しています。省庁自体もこれからの時代の働き方に合わせた建物を作っていかないといけない、と中の人も考えているようです。もちろん、省庁内では機密事項などの問題があり、外部の人が簡単に出入りできるスペースを作ることも難しい。そこで、ペーパーレス化による省エネを推奨している部内関係各所が、まずは経産省の中の書類をペーパーレス化を実践しています。USBメモリーなどの外部ディスクを使用せずに、イントラネットを利用してDocを共有できる仕組みを構築。省庁内の人は自前のIDカードを利用してノートパソコンからIDカードを読み取りログインすることで、瞬時に自身のデータをパソコン内に取り込むことができるようになりました。同時に、職員それぞれにPHSを持参することでいつでもどこでも省庁にいれば連絡をつける体制をとることで、より集中した作業や打ち合わせや外出、資料室などで資料を探しているときでも、急な対応時に自身のデスクに戻ることなくその場で作業できる環境を構築しているというものなのです。

打ち合わせスペースの様子。余白と透明性を高めたスペース。

そもそも、省庁内ではノートパソコン自体の使用も最近導入されたばかり。それくらい、情報の管理をしっかりとした状態にいるのです。デスクトップパソコンでしか作業できなかったときは、どんな状況であっても自身のデスクから離れることができず、また電話もデスクの固定電話から内線で呼び出しをされて対応するという現況だったそうです。

そして、最近こうしたスペースが省庁内に完成したことで、各人が支給されたノートパソコンを使い、こうしたコミュニティスペースで打ち合わせや外部の人と話す環境を作り上げているんです。

こうしたいくつもの取り組みを導入し、省庁自体も変わろうとしているように思えます。今回のようにPERCH OFFICEができることで、省庁の中でアイデアや人との出会いを作り出す余白を生む1つの施策だと考えます。

MTGルームの1つは、ちょっと一段上がったところに区切りがあるところなのですが、靴を脱いでリラックスして話せる空間にもなっていたり。

これまで、外部の人が来て打ち合わせをするのは部署内にある会議室がほとんどだったのですが、こうしたコミュニティスペースの中で打ち合わせをすることは、空間における快適さや対話の生まれやすさが変わってくると思います。他にも、省庁内部であっても、隣の部署がどういったことをやっているのかなかなか把握できていない中、こうした場所を通じてから、部署間を超えた人たちがつながりを作れる場所をもつことから、新しいものが生まれる可能性も大いにあります。

集中作業ブースもあったり。

外部からは、最近では省庁を見学した小学生や中学生たちの休憩場所にもなっているそうで、この場所に来ることで省庁の雰囲気を知ったり、見学以外の職員と出会い機会だったり普段の様子が知れるきっかけにもなります。

壁は、書き込みができるホワイトボード。ちょっとした話だったりアイデアをメモったりするのに便利です。けっこうこだわって作ってるみたいです。

変わらない、お固い、というイメージの多い省庁。けれども、こうした1つ1つの民間の動きを取り入れている様子を見ると、行政の人も色々と試行錯誤しているのだと感じます。もっと政治や行政と、民間の人たちとが気軽に交流できる場があるといいなと思うと同時に、互いのことをもっと理解しあうことで、これからの未来にとっても意味のあるものが生まれると思います。


窓際も霞ヶ関が一望できる(この日はあいにく天気が悪かったので写真映りが悪いですが)


各机や床の随所に電源も用意。省庁の人は省庁内の無線LANを通じたイントラネットが利用できるため、どこでも作業がおこなえます。

まさに、日頃「コワーキング」という文化を取材していて思っていたのは、こうした企業などの中において、他の部署同士でもつながれる場所を企業の中でつくり、ここを起点として様々なワークショップやアイデアのブレストやブラッシュアップ、他の部署や外部の人と話をしながらやりとりをする場が大事だと思うのです。「コワーキングスペース」という言葉だけを切り取ると、フリーランスや起業の人たちが中心になって使うシェアオフィスをイメージする人も多いと多いが、そもそもとして「Co-work」するということは、つまり多様なアイデアや価値観を通じて協働、共創を生み出す環境のことを指すと私は考えています。そのため、別にスペースが無理に必要とは思っていません。オンラインでもオフラインでも、場所はどこでも極論言えば構わないのです。隣の人、違った人と何か新しいものを生み出そうという意識をもち、オープンマインドによって新しい気付きを得ることから、プロジェクトやスタートアップのアイデアが生まれる環境を生み出すこと考えています。

もちろん、このスペースにはよくコワーキングの話をすると出てくるコミュニティマネージャーやホストなどはいませんが、こうした開かれた場所がある(これまでほとんどなかった)ということからすると、大きな発展だと思います。

コワーキングスペースというスペース論ではなく、コワーキングという“文化”を、様々なところで生み出されることを望んでいます。その1つの例として、経産省のPERCH OFFICEは、省庁というところがこうした取り組みを展開しているということも、小さいかもしれませんが大きな一歩だと思います。

PERCH OFFICEは、サイトなどは特になく、経産省の内部にある内部スペースなのですが、経産省に行く機会がある人は、ぜひ覗いてみてください。

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