紙とKindleの読書体験の違い

Pocket

Kindle Paperwhite(Wi-Fiモデル)を自分へのクリスマスプレゼントにしてから、毎日使っています。電車の中や寝る前などのちょっとした空き時間などに有効です。ポケットサイズなので、手ぶらで携帯と財布とKindleだけもって出かけることも多いです。

Kindleについて、色々と使用感などを書いている人も多いので、詳細は省きたいとおもいますが、Kindle FireよりもPaperwhiteが端末としての安さや手軽さ、「読書をする」という機能だけをメインとすることによる使用の制限によって、読むことだけに集中することができます。

ところで、Kindleを使っていてよく言われるのがページ遷移の遅さです。紙のようにパラパラとめくったり色んなページに移行することが難しかったり、Eインクでの表示なので、次のページに行く際のスピードがどうしてももたつく様子があります。途中のページを読むためには、「移動」から指定したページ数を入力するという作業は、あきらかにページを移行することの労力がかかってしまいます。そのため、Kindleはその多くが最初の1ページから読み始めることが多いかなと思います。紙の本の特性として、好きなページを好きなときに開けば見れる、ということ、そして、紙の厚さがもつ手触りや、手の感覚として「なんとなくこのへんにあのことが書いてあったなぁ」みたいなことができるのが特徴だと思います。それがたしかにKindleだといまはできずらいです。

けれども、この最初から読ませることとページ遷移が遅いことは、意外と僕はポジティブに捉えていたりします。

途中からではなく最初から読むことは、書籍の中身によっては最初から順番に読むことで理解ができるものがあると思います。例えば「小説」。一回読んだことがある小説ならまだしも、所見だったら最初からあらすじなりを読んでいかないと物語が理解できず、没入しずらいと思います。また、神だったら途中で内容をスキップして最後のほうにいきなり読むこともできますが、本来の作家の意図としては、その物語に張り巡らせている伏線や様々な心理描写を1から順番に読者に歩ませることで、そのストーリーへと惹きつけさせています。だからこそ、できれば最初から最後までを一気通貫して読むことが一番その作品を理解する方法だったりします。また、小説のほとんどは作画や絵がないため、テキストだらけのため意外とKindleで読んでいても飽きないし、疲れない。また、どこでも端末だけなのでいつでも気軽に読めるというのは、紙だと厚さやページをめくる動作が面倒だったりということを簡素化してくれるため、ただひたすら「次へ」を押していけばいいという意味では、「しっかりと読む」行為として満足できるものです。

また、Eインクの表示がすばらしいため、「読みやすさ」が格段に上がっています。また、ページをめくるたびに、ページ全体がしっかりと表示されるので、「じっくりしっかり読む」ことができます。

実はこの「じっくりしっかり読む」という行為なのですが、これまで紙で読んでいると、なんとなく読んだりしてさっさと次のページにいってしまいがちなものを防いでくれます。また、スマートフォンなどを含めて、多くの人がモバイルでなにかを読んだりする行為が増えてきたなかで、書かれている文章をしっかり読むという体験を疎かにしがちです。そんな中、書かれているものを読み込む行為をおこなうのは、実は文章を理解することにおいて重要なポイントです。


そこで一つ面白い動きとして、週刊ダイヤモンドが、過去に雑誌で特集した記事を再編集し、Kindleで読みやすくすると同時に特集単位で安価で売り出すことを先日から始めました。実は、この動きはとても注目するべきものです。

雑誌には、これまで膨大な量の特集記事が存在します。その内容は、編集部を含めた編集者がコンセプトをたて、ライターがしっかりと関係者に取材をしてできたものです。企画をたて、取材をし、できるだけ読者にわかりやすく記事や文章に落としこむ作業というのは、日々大変な思いで作られていると、僕自身も文章を書く身として、感心してしまいます。そうした文章に対する努力が、いまの情報が溢れておりじっくりと読まれない時代において文章が軽視されがちです。

しかし、Kindleなどの電子書籍では、こうした特集記事に再度フォーカスをあて、綿密な取材を通じて調査した内容が多く存在しています。そして、それらを一つずつしっかりと読みこめば、その業界や対象の研究がスムーズにできるようになれるのです。これまで「流し読み」をしていた記事なども、改めて読んでみることで、新しい発見や気付きをえることができます。また、雑誌も小説と同様に最初から最後まで編集者によって読む手のことを考えてストーリーが作られています。小説と同様に、書かれてることを理解し、没入体験をもつことによって、よい読書体験を得ることができるのです。

1から読むことでの物語の没入、しっかり読み込むことで理解をより深めることができるのは、いまのKindleの仕様だからこそできるものです。もちろん、そうはいってもやはり次のページにうつるページ遷移のスピードはもう少しあってもいいのかなと思いますが、紙とKindleのような電子書籍は、互いに相補関係などもつことができるものであり、「紙か電子か」という論争をしていても仕方のないものです。今回のダイヤモンドの特集記事単位でのKindleでの販売というのは、紙から電子へ、その紙で培ったものを電子書籍でも体験させるということの形の一つでもあります。また、Kindle出版によって、個人で新書ほどいかない程度の短い論文なり出版物をだすことで、これまでの出版という行為のハードルもぐっと下がってきます。

これらを含めて、紙、ウェブ、電子書籍などといったそれぞれのメディアに対応したコンテンツづくりが大切になってきます。まず先に考えるべきは、その作られる中身である「コンテンツ」がもっとも大切であり、そのコンテンツをいかに読者に「伝わる」ためのメディアを選択するか、その選択されたメディアの一つのチャネルとして、紙や電子書籍があるという意識をもつことが大切です。

紙でできる読書体験、電子書籍でできる読書体験はまったく違います。紙は紙のよさ、電子書籍は電子書籍のよさがあります。それぞれの特性を理解し、よいコンテンツを読者に一つでも多く提供できることを、僕たち作り手も考えないといけません。そうした意味で、Kindleは紙の読書体験とは違うんだ、ということが、今回実際にKindleを使ってみて感じたものことです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です