組織のアイデンティティと向き合うこと

ICONIC
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何十年、何百年とその分野や業界で存在感を放つ企業や団体。多くの人が、まずその組織を思い浮かべる、それぞれの分野における「アイコン」、つまり「象徴」と呼ばれるような組織になるにはどうすればいいのか。

その分野のトップの存在になることだけでも難しいのに、その状態を維持し続けるのはもっと難しい。

そもそも、企業には「永続性」が求められる。人という人格を超えた法人としての人格を持つとき、人の寿命を超え、何十年、何百年と生きていく運命でもある。そこには、大きな大義名分やビジョンがあり、そのビジョンを達成したり、常に更新し続けていくために存在する。

人は入れ替わるが、組織自体は存在する。そうしたときに、その組織があり続ける理由、つまり「アイデンティティ」こそ組織を維持するものであり、常に成長し続けていくためのものだ。

最高のパフォーマンスをもとに人材を引きつけ、チームを組成し、そしてチームが入れ替わりながらも時間とともに進化していく。組織が常に成長するために必要な「能力の好循環」とは、細胞のように常に入れ替わりながらもアイデンティティを保ち続けていくために必要ものだ。

単純な企業論、組織論を超え、その組織がつねに「アイコン」であり続けること。その「アイコン」とは組織内でとどまるのではなく、分野や業界全体の指針をどう定めるか。本書は、そうした「アイコン的組織」を分析しながら、組織としてのあるべき姿について問いかける。

面白いのは、アムステルダムのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)を中心としたオーケストラを分析しているという点だ。個々の技術だけでなく、チーム全体としていかに相乗効果を生み出すか。同時に、指揮者と演奏者との関係、新しい演奏者の採用、組織という営利を生み出し、かつ組織を維持していくための経営など、普段なかなか外に出ないオーケストラという組織運営という視点からの学びなのだ。

パフォーマンスや能力主義といったものだけでなく、分散型のリーダーシップという、リーダーシップ論にも着目している点も注目だ。トップダウンとも違う、チーム全体が能力を発揮しやすくするための環境づくりこそ、リーダーシップに今こそ求められている。

フィルムアート社さんにお声がけいただき、本書の書籍紹介のページで書評コメントを載せさせてもらったが、ゲラをもらいすぐに読了しまった。構成もポイントがうまくまとめられており、企業経営や組織をまとめる人にとってもよい本ではないだろうか。