「文章を書く」ということを改めて考えさせられる一冊−『20歳の自分に受けさせたい文章講義』

Pocket

僕たちは日本という国で生まれ、日本語という言葉を小さいことから覚えしゃべったり文章を書いている。それが当たり前であり、特別な訓練をうけなくても問題なく文章を話したり書けると思っている。

話すということは、話されている言葉よりも表情や雰囲気などの非言語(ノンバーバル)なコミュニケーションによって、その伝えたいことの意図が伝わっていると言われている。現に僕も人と対面するときには身振り手振りなどを使って一生懸命相手に伝えようとしている。だからこそ、話し方の訓練やプレゼンテーションスキルのような解説をする書籍や訓練をすることも多いしそうした場も多い。

しかし、「書く」という行為は改めて考えてみるとかしこまって訓練や勉強をしたことはほとんどない。小学校の国語の時間でも、作文の授業は好きなことを書きなさいとか、思ったことを書けばいい、ということしかしていない。
自分の意図を文章というただ一つのメディアを使い相手に届けようとするためには、読んでもらうことを意識したいわゆる「書き言葉」に変換しなければいけない。そして、書き言葉にするためにはそれに必要な技術や構文や文体がある。そうでなければ、読んでもらっても自分が伝えたいと思っている意図が伝わらないからだ。

「伝える」ではなく「伝わる」文章を書く。あらゆる文章はその文章の読者がいる。それは未来の自分やメールの相手、知らない他人やブログの読者など様々かもしれない。どんな文章にも「読み手」が存在する限り、「伝わる」文章を書くことはとても大事だ。
そのために必要な要素とはなにか。それは、感情や感覚と言った曖昧なものではなく、きちんとした論理がそこには存在する。自分が主張したいこと、自分が伝えたいこと、そしてその理由や根拠を踏まえ、それらがしっかりと文章として滞りなくつながっていることが大切だ。

SNSやメールが一般的となり、そして、誰もが情報発信者になれる時代だからこそ、情報を発信するということ、文章を書くということ、そして自分の意見を伝えるということを考えなければいけない。だからこそ、「書く」という行為を改めて考えるきっかけとして、古賀史健氏の著書である『20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)』は読んで様々な気づきを得ることができる書籍だと思う。

僕はいくつかのメディアなどで文章などを書かせてもらっているが、しっかりした文章の書き方を習ったことはない。人の文章の書き方やマインドセットなどを話を伺ったり書籍から読み取り学んできた。正直言えば文章を書いたり編集の世界にいる人たちから見たらまだまだ僕の文章は大したことないだろう。それでも、少しでも相手も読んでもらいたい、相手に伝えられるようになりたい、という思いで日々を過ごしている。だからこそ、なにかしらの文章を書くことに興味のある人にとって、この著書はおそらく僕が感じた気づきと同じようなことが得られるに違いない。

そして、この著書に書かれていることはなにも文章やテキストに限ったことではないと僕は考える。相手に自分の意図や考えを伝えること。それはウェブなどにとっても同様のことが言える。必要性のない華美なデザインやフラッシュ動画、ユーザにとって不親切なナビなどがまさにそうだ。見た目ではなく、ユーザーや利用者が本当のそのサービスにやってほしいことや満足をしてほしいことを叶えることを考えてデザインしていかないといけないというUX(ユーザーエクスペリエンス)の考えを著書からも学ぶことはできる。

著者曰く「読者の椅子に座る」ということ、どんな相手であっても伝えたいことを伝えるための努力をすることは、あらゆる分野の人にとって必要な意識だ。「美文ではなく、正文であるべき」という著者のメッセージは、あらゆる分野の人によっても考えなければいけない考えだ。
当たり前にウェブで情報発信したりウェブメディアを作ることは簡単だからこそ、きちんと自分が伝えたいことを伝えるためにどうすればいいか。改めて考えるきっかけとその技術やスキルを学べる著書の一冊だと感じた。ぜひ手にとって読んでほしい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です