新年が明けてもう数日が経った。
元日といえば、長野から帰ってきたあとに、年越したけど信州土産のそばでも作るかと思うも、せっかくの正月なのでお雑煮を作ることに。
思いのほかすぐに食べてなくなってしまったので、先日山梨を訪れたときに自分用にお土産で買ったほうとう(地方に行く際に、地のものを自分用に買ってよく料理する)を、具がなくなった雑煮の汁にいれて味噌でといていただくことに。正月早々、お手軽料理、かつ、効率的な料理で日常を楽しく過ごすことに精を出す。
近所の深川不動堂や富岡八幡宮でお参りしたあと、「そういえば今日は1日だったな」と思い立ち映画を見ることに。観たのは『この世界の片隅に』。すでに11月にも鑑賞してるので、2回目だ。『この世界の片隅に』を見るたびに、食事こそ日常を表現する一つの主題である。懸命に生活するその瑞々しさにこそ、人の美しさがある。
思えば、2016年もよく映画を見たものだった。特に、2016年は邦画、洋画問わず話題な映画が多く、数多くの映画を観ることができた。機会をみて、2016年の映画の振り返りもしたいところ。
個人的には、NTL(ナショナル・シアターライヴ)で、映画館で素敵な舞台を観る機会に恵まれたのはとても嬉しかった。『ハムレット』『リア王』となったシェークスピアの舞台や、ベネディクト・カンバーバッチとジョニー・リー・ミラーによる二人主演の『フランケンシュタイン』(博士役とフランケンシュタイン役それぞれのバージョンあり、カンバーバッチが博士役を観た)の二人の演技は素晴らしかった。
『スカイライト』『ハードプロブレム』のような現代を舞台にしたものも、小さな舞台装置のなかで、台詞回しや登場人物の関係性などを通じて、それぞれのテーマを導いていた。個人的には、『夜中に犬に起こった奇妙な事件』は、プロジェクションをふんだんに使い、小さな舞台をいくつもあるブロックや照明を使った舞台装置は、現代のテクノロジーを活用した表現方法だ。映像でも楽しめたが、生でも鑑賞したいところ。
他にも、6月にNYを訪れたときにはロングラン公演の『レ・ミゼラブル』を生で観れた。あと、オフ・ブロードウェイの『Sleep no more』は、演者と観客が同じ舞台装置にいて、観客が演者を追いかけながら、まさに舞台の世界観の一人の登場人物となるような没入感のある、新しい体験のある舞台だった。(『Sleep no more』のような舞台は「イマーシブシアター」と呼ばれているらしい)
正月早々、普段と変わらない生活を送ったような気がする。けれども、正月だから、と気張るよりも、日常と地続きになっているものから感じるものもあるだろう。
日常にある小さな出来事に感動し、仕事だけでなく映画や舞台を通じて観たこともない世界や違った世界を想像する。ときには、現代が抱える問題を浮き彫りにしたり、考えさせられたりするものもある。文化が育むものは、とても素晴らしい。
映画は、映像というコンテンツだけではなく、映画館で観るという一つの体験をもって、完成するものだ。閉ざされた空間で、大勢の人たちと「観る」を通じることで伝わる感情の空気感がある。一人では得られない感動や体験を、隣にいる人や他者と一つの空間を共有することで醸し出される何かがそこにある。
2017年も、素敵な映画と舞台を楽しめる年にしていきたい。本年もよろしくお願いいたします。